「――申し訳ございません。その……」

　いつもなら、無礼にならない程度にレオンティーナの視線をまっすぐに受け止めるソニアの視線が、左右に揺れている。

「誰かにいじめられた？　いえ、それはないわよね。あなたに意地悪をしたら、私の怒りを買うってこの屋敷の者なら知っているはずだもの」

　レオンティーナとソニアの間の主従を越えた友情については、この屋敷で働いている者なら皆知っている。
　レオンティーナに恩義を感じたソニアが、どれだけ一生懸命学んだのかも皆知っているから、ソニアがレオンティーナの一番のお気に入りだからと言ってソニアをいびるような考えなしはいない。

「――違うんです。そのぅ……お許しくださいませっ！」

　転がり落ちるようにして床に座ったソニアは、レオンティーナに向かって深々と頭を下げた。床の上に座っているから、レオンティーナがソニアを見下ろす体勢になる。
　平伏したままぴくりと動かないソニアの後頭部を見下ろしながら、レオンティーナは考え込んだ。

（ソニアが、こんなになるなんて……よほどのことだけれど。思い当たるようなこともないし）