悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~

 父の手が、こんなにも温かいということも知らなかった。

(……私は)

 皇帝になれなくてもいい。不意にそんな思いにも囚われてしまう。
 ヴィルヘルムが生きていてくれれば、それで十分なのだ。


 ◇ ◇ ◇

 

 バルダート大公家は、平静であった。外から見る分には、いつもと変わりないだろう。
 ――けれど。
 レオンティーナは知っている。これがひと時の静けさであることを。
 いつものように父は皇宮に出仕し、戻ってきたのは遅かった。

(……ちゃんと話をしてくれたかしら)

 父に問いただしたいけれど、それはレオンティーナには許されていない。
 寝る前に、流行の読み物でも読もうとベッドに持ち込んだけれど、それもまた難しい話だった。

(ヴィルヘルム様と、お話をする時間があったらいいのだけど……人目につかないようにしないといけないし、難しいかもしれないわね)

 レオンティーナは、胸に手を当てた。
 父は、ヴィルヘルムにきちんと話をしてくれただろうか。話をしたとして、ヴィルヘルムがそれを信じるかどうかはまた別の問題だ。
 読み物を持ってベッドに入っても、集中できるはずもない。