皇宮の庭園で、たくさんの令嬢に囲まれながらレオンティーナは空を仰ぐ。今日の空は真っ青で心地いい季節だ。
 レオンティーナが、皇宮の舞踏会で鮮烈なデビューを果たしてから、二週間が過ぎようとしていた。
 あれだけの人の前で、皇子ふたりに取り合われたのだ。レオンティーナに周囲の目が集中するのはしかたのないところだろう。
 おかげで、シャンテール大公家の令嬢は、すっかり影が薄くなってしまったと言うが、それはレオンティーナの責任ではない。

「では、レオンティーナ。私はもう行くわね。また、遊びに来てちょうだい」
「はい、ルイーザ様」

 今までレオンティーナと話をしていたルイーザが、話の輪を離れていく。他の令嬢と話をしようというのだ。いくらレオンティーナと親しくしていても、招待客を放置しておくわけにはいかない。
 立ち去るルイーザの後ろ姿を見送りながら、令嬢達がひそひそと話し合うのが、レオンティーナの耳にまで届く。

「――レオンティーナ様のご結婚は、いつになるのかしら」
「まだ、全然予定なんてたってないそうよ」