弟のハイラムが生まれてから、三年。レオンティーナは十五歳になった。
 父はロアと領地を往復し、レオンティーナは、母と弟と共に領地で暮らす。母とハイラムが領地に残っているのは、ある程度の年齢になるまでは領地でのびのびと育てたいという母の意向だった。
 レオンティーナが生まれたあとのように、両親の仲がぎくしゃくしているからというわけではない。
 一人だけ行ったり来たりなので、父はさみしいようだ。レオンティーナへの手紙には、しばしば泣き言が書かれていた。
 ロアから領地に戻ってくる度に、父は家族に多数の土産物を持ってくる。幸せだ、とレオンティーナは思う。ヴィルヘルムとルイーザは、しばしばレオンティーナに手紙を送ってくれて、友情はたしかに続いている。

(ハイラムを守るのは、私の役目よ)

 それを思えば、今まで以上に強く、歴史を変えようという思いが芽生えてくる。
 マレイモの栽培方法の研究だけではない。父に頼み、飢饉に備えて国外の商人達との取り引きも始めた。少しずつ保存のきく食料を買って蓄えるためだ。いざという時には、国外の商人達から、食料を買うこともできるだろう。