密室でふたり、イケナイコト。



「春名ちゃん……」


いつの間に…


「この混雑で人に流されちゃって。そしたら瑞稀の姿が見えたから頑張ってこっちに来てみた!」


わたしもいるというのに、なぜか存在を消されてない?


てか、さっきの悲鳴……

春名ちゃん、だったんだ…


どうりで聞いたことある声だと思った。


にっこり可愛い笑みを浮かべているけど、成宮にぴったりとくっついたままで。


なんか……いや、だ。


また、胸にモヤモヤとしたものが広がっていく。



春名ちゃんと成宮が2人でいるところを見たら、いつもこう……



「暑い。離れろ」


眉間にしわを寄せてベリっと春名ちゃんを引き剥がそうとする成宮。


「えー、だって掴まるとこないんだもん。
今だけ、いいでしょ?ね?」


「無理」


「ゆずきちゃん、いいよね?」


それ、わたしに聞くの……?

成宮だってバッサリ断ってるのに。



「おい、嫌だって言ってんだろ。
こいつの話なんか聞かなくていいから」


「っんもう、瑞稀ってば冷たいなぁ…」



その目はいいよって言え、とでも言いたげで。

断れないって分かってるくせに、敢えてわざわざ聞いてくるなんて。


「わたしは全然、大丈夫…だから」


「ありがとう、ゆずきちゃん!!」


ものすごい視線で睨まれ、

そんなの、うなずくしかできない……


成宮は驚きで目を見開いていたけど、わたしが同意したせいか、もうそれ以上は何も言ってこなかった。