「も、もう……
む、無理……っ」


そう言ったところで、離してもらえるわけがない。

むしろ、今のわたしを満足げに見下ろしているようで。


「無理、じゃないだろ?
俺がどんだけ心配したと思ってんの?」


「掃除終わって戻ってきたら、教室にいないし。カバンもないから帰ったのかと昇降口に行ってみれば、ローファーはある。てっきりここに来てるのかと思えば姿が見当たらない」


「何かあったんじゃないかとか、女子に囲まれてるんじゃないかと思って学校中探し回ったんだけど?」


「うっ………」



「そしたら、お前が体育館に走って行くのを見たってやつがいたから行ってみれば……まためんどくさいやつに絡まれてるし」


はぁ……と成宮はため息をついた。


それは冗談じゃなくて、本気でわたしを心配してくれてたんだと分かって。


胸がぎゅっと締め付けられる。

何も言わず、体育館に行ったことを心の底から後悔した。


「頼むから、俺から離れんなよ。
心臓に悪いって前にも言っただろ?」


「はい……」



「今回は許すけど、次また同じことしたら、どうなるか覚えとけよ」