ちがう、違うよ…
「弟、だよ……」
「なに?」
「侑は、弟なのっ……」
「え……?弟?」
「そ、そうなの…っ!!」
驚いたように、わたしの手を掴む力が弱まったけれど、それもほんの一瞬で。
「ふーん、そうなんだ」
すぐにいつも通りの低音ボイスに戻った成宮。
あれ、勘違いでは……なさそう?
目の前が見えてないからあれだけど、成宮が不敵な笑みを浮かべているような気がするんですけど…
気のせい……、だよね?
「なんとなく、そうかなとは思ってた」
「えっ!!?」
「だって、雰囲気とか似てるし?
ゆずきが他の男を下の名前で呼んでるのなんて、聞いたことねえから」
「た、確かに……っ」
よく知っていらっしゃる……
チラリとこの特訓中に成宮を“ 瑞稀 ”と呼んだことはあったけれど、
侑以外の男の子を、下の名前で呼んだことがない。
自信ありげなその声は、ぶるっとするくらい、余裕たっぷり。



