「今日の朝、俺言ったはずだけど。
ゆずきに何かしたら、許さないって」
「ご、ごめんなさ…」
「────俺、物わかりの悪い女、大嫌い」
「…………」
呆然とする相沢さんをもう一度睨み、歩き出す成宮。
肩に回った力強い腕。
鼻をくすぐるシトラスの香り。
それに不思議と安心している自分がいる。
いつもムカつくくせに、こういう時は駆けつけてくれる。
わたしはアニメのヒロインでもないし、庶民以下の平凡なオタクだけど……
そんなの、
頬が熱を持っているのは、叩かれたからじゃない。
───ドキドキ、するに決まってるじゃん……



