「ゆずき────?
そろそろ出なくていいの──?」


下から呼ぶお母さんの声にハッとする。


ヤバっ…!

そろそろ出ないと!


時計の針はいつも家を出る時間を指している。


「いってきま────す!!」


スカートのポケットに忍ばせてあるマスクを装着して、慌てて家を出た。


登下校の時は必ずつけているマスク。


声優はのどが命。


冬ならまだしも、6月につけてる人なんか、学校の中じゃほとんどいない。

それに風邪も引いていないのに、つけてたら逆に怪しまれちゃうしね?


だから学校にいる間は外しているけれど、基本的に登下校の時はつけるようにしているのだ。