「智之。軽井沢まで 麻有ちゃんに会いに行こうとは 思わなかったの?」お兄様に聞かれて
「思わないよ。そこまでの自信はなかったし。麻有ちゃんの気持ちも 全然わからないんだよ。子供の時の事で。それに、自分でも 何で満たされないのか 段々わからなくなっていたからね。」
「私も、再会してはじめて気づいたんです。やっと 自分の歯車が噛み合って 回りはじめた感じで。それで 今までの自分にも反省できたんです。」
こんな風に 話しができる家族って素晴らしい。
「何か、深いね。二人の話しが聞けて 良かったよ。俺も 靄が晴れた気がする。」
お父様が言ってくれる。
「ありがとうございます。私も 話せて良かったです。」
こんな私の話しを こんなに親身になって 聞いてくれる家族。
「麻有ちゃん。私達 本当に素敵な家族に入れてもらえて 幸せよね。」お姉様が言う。
「私、自分の父と こんな風に話したことないの。いつも眉間にシワを寄せて、難しい顔していて。何か言ったら叱られそうで。相談なんてできなかったの。でも今は、お父様もお母様も紀之さんも、何でも私の話しを聞いて下さるし。他愛のない無駄話しでも。とても心が安定するわ。」
お姉様の言葉に 私も大きく頷く。
「会話は大切だからね。言わなければ わからないから。相手の話しを聞いて 自分も話すことで 理解し合えるんだよ。だから、これからも なんでも話し合える家族でいようね。」
お父様の言葉に 私は涙が滲んだ。
「お父さんの 経営理念だからね。“ ビジネスのヒントは会話の中にある ” って。」
お兄様が言う。
「わあ、すごい。」
感心する私を 智くんが温かく見つめてくれる。