「高村くん、ちょっと。」ランチから戻ると課長に声をかけられた。
「2時にI商事の人が来るから、高村くん同席してもらえるかな。」
「はい。大丈夫です。」
「代理店契約のことを詳しく聞きたいらしい。そのあたりの説明を頼むよ。」
「わかりました。資料を揃えておきます。」
大学を卒業して3年、仕事は順調な方だと思う。
同級生の中にはもう転職をしている子もいたけれど、私は会社を辞めたいと思ったことはなかった。
新卒で採用された会社は大手損害保険会社で、毎年人気企業ランキングの上位にはいっている。
配属は一般職だったので 特別、刺激や やりがいは無いけれど、その分競争やプレッシャーも無かった。
目の前の仕事を効率よく丁寧に片付けていく事務作業は、私には合っていると思う。
職場には気の合わない人もいるし、理不尽な事もあるけれど“それも仕事“と思うことができた。
逆にそう思える程度の不満でしかないのだと思う。