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「えぇっ⁉︎」
その日の夜。
我妻(あがつま)家の御曹司5人と一緒に、夕ご飯を食べていると、突然、長男の悟(さとる)さんがこんなことを言いだした。
『じつは俺、父さんから、たまった仕事を手伝ってほしいって言われて、しばらく実家に帰らなきゃいけなくなったんだ』
その言葉に対して、私が発したのが、冒頭のセリフだ。
ほぼ言葉として成立してないけど。
「うるさい……」
四男の薫(かおる)くんが、箸を持ちながら、不機嫌そうな顔をした。
薫くんは、にぎやかなところが好きじゃないみたい。
だから、誰かが大きな声を出すと、薫くんは不機嫌になる。
「…………」
薫くんの双子の弟で、我妻家の末っ子の匠(たくみ)くんも、少し嫌そうな顔をする。


