イケナイ王子様

顔色の変化に気づかない翔さんのほうがおかしいけど。


うつむき、真っ赤になっているであろう顔を隠していると、突然ギュッと抱きしめられた。


「あー、たまんねぇ。


愛海(あみ)って、なんでそんなに可愛いことすんの?」


「……っ!」


い、今、“愛海”って……!


さっき、私のことを“あんた”って言ってたのに……!


心臓のドキドキが止まらなくなる。


全身が心臓になったみたい。


「し、翔さん……っ」


「なに?」


ひゃっ……!


翔さんの声が耳もとに……!


く、くすぐったい……っ。


「は、離してください……」


「なんで?」


なんでって……。


「私、今、お風呂場の窓を拭いてる途中なんですよ?


翔さんも、今見てたでしょう?


だから……」