ということは、さっきの声は、藤堂にとって俺の存在を知らせたくない人物。


だとすれば……。


「愛海⁉︎


愛海、そこにいんのか⁉︎」


俺がそう叫んだ直後、スマホ越しに小さな舌打ちが聞こえた。


図星のようだ。


あいつ……藤堂にさらわれてんのか……!


「そこで待ってろ、愛海!


すぐそっちに向かうから!」


勢いにまかせて通話を切り、呆然とする紀野と弓屋を見ないまま、俺は走りだした。


「ちょ……っ!」


「し、翔様……⁉︎」


あいつらの反応なんて、今は返事できない。


愛海を譲れない気持ちだけが、俺を突き動かしてたんだ……。