しかし、近寄ろうとしない。


紀野くんが近寄らないのをいいことに、私を背後から襲った人物が、紀野くんに暴行を加える。


ゲシッ‼︎


ドサッ。


「く……っ」


すねを蹴られた紀野くんが、苦しそうな顔で力なく倒れる。


紀野くん……!


助けようと思ったが、その気持ちを行動に移せなかった。


背後から口をふさがれてるから、というのもあるけれど、ふさがれたときに嗅がれた薬品のにおいで、クラクラしたのだ。


そこから意識が飛ぶまで、時間はかからなかった。