誰かの悲しむ顔を見たくないから……。


なんて言っても、ミドリさんには逆効果かもしれない。


本当のことを言ったら、襲われそうになったからね。


だから、言うのは心の中だけで……。


「わかったわよ」


あれ?


ミドリさん……あっさりうなずいた?


「たしかに、綺彩の言うとおり、その子を傷つけたからって、翔くんが私に振り向くわけがない。


翔くんの悲しむ顔、見たくないし」


ということは……。


「ごめんなさい。


あなたを傷つけるまねは、二度としないわ」


そう言ったあと、ミドリさんが私に手を差しだす。


私が驚いてると、きーちゃんが「握ってあげなよ」とささやいた。


そうだね、握ってあげよう。


こくんとうなずき、ミドリさんの手を握る。


手を握ったときのミドリさんの目が、なぜかうるんでる気がした……。