洋季さん……私の言葉、信じてくれたかな。


きっと信じてくれただろう。


洋季さんは、性格に裏表のない、優しい人なんだから。


襲われるなんてことは起きないはず。


なんて思ってるのに……。


『あいつは俺の姿を見るなり、こう言い放ったんだ。


『お前の父親がバカだから、データを盗めたし、金も盗めた』ってな』


いまだに、紀野くんの言葉が頭の中でリピートしてる。


洋季さんが紀野くんに嫌味を言い放ったことなんて、信じたくないのに……。


なんで何度もリピートされるんだろう。


「そのこと考えるの、もうやめよっ」


心の中の自分に言い聞かせるようにそうつぶやき、心を落ち着かせる。


そして、家に向かって走りだした。