「……はぁ。


なんであんな男の誘いに乗ったんだよ」


翔さん、すごく機嫌が悪そう……。


機嫌を直してくれないかな。


私を見る目が、まるで血に飢えた肉食獣みたいで、恐怖を感じる。


「え……だ、だって、洋季さんは悪い人じゃないから……その……」


うぅ……まだ睨まれてる……。


「それにあいつのこと、なんで“洋季さん”って呼んでんだよ」


はっ、そうだ。


洋季さんとの関係がバレないように、なにか説明しなきゃ!


「り、両親が亡くなる前からの知り合いだったので……」


「ふーん」


な、なんとかごまかせたかも?


「まぁいいか。


明日、藤堂の父親のパーティーに行くための服を買いにいくぞ」


「は、はい……」


どうやらごまかせたみたいだ。


「俺の女に手を出したりしたら、マジで許さねぇからな……」


そんな翔さんのつぶやきは、安堵する私には聞こえなかった。