「でもあたしたち、大山君になにがあったのか知りたいの」


あたしはようやくそう言うことができた。


大山君はジッと地面を見つめている。


そこになにかあるのかと視線を落としてみると、一匹のチョウチョが低い位置を飛んでいる所だった。


チョウチョは白い羽を優雅に動かして飛んでいく。


大山君はそれを見送ってホッとしたように息を吐きだし、ほほ笑んだ。


「なぁ、聞いてるか?」


柊真が不安そうな声で聞くと、大山君はやっと顔を上げてほほ笑んだ。


さっきまでの沈んでいた雰囲気はいつの間にか消えている。


「聞いてるよ。心配してくれてありがとう。でも、大丈夫」


声色もハッキリして、ハキハキとした口調になる。


今の間に一体なにがあっただろう?


あたしは飛んで行ったチョウチョへ視線を向けて首を傾げた。


「よかったら上がって行く? せっかく来てくれたんだからお茶でも出すよ」


大山君の方からそう声をかけてくれたので、あたしたちは頷いた。