あたしは手鏡を取り出して大西さんの様子を伺った。


大西さんはついさっきの出来事なんてなかったことみたいに、熱心に問題を解いている。


みんな集中できなくてぼんやりしていたり、まだすすり泣きの声が聞こえてきているというのに、ひとりだけ冷静なのも気になった。


でも……。


あたしは手鏡を胸ポケットにしまってため息を吐きだした。


大西さんはなにもしていないということは、ここにいる全員が知っている事実だった。


彼女はただ見ていただけ。


大半の生徒と同じで、呆然と立ち尽くしていただけなのだ。


ただとても小さな声で『ダメ』と言っただけ。


その声が男子たちに届いていたとも思えなかった。


どこをどう見ても、あれは男子たちが自発的に行動を起こしたものだった。


悶々とした気分で考えを巡らせていると、自習時間が終るチャイムが鳴り響いた。


結局出されたプリントは空白のままだ。