確かに、大西さんにはその言葉が良く似合う。


けれど、今のニュアンスはどこか違った。


ニックネームで呼んだのでもなく、冗談半分に言ったのでもなく。


本当に大西さんが女王様であるかのような言い方だった。


大西さんが、微かに唇を開いた。


薄くリップを引いた桜色の唇が言葉を紡ぐ。


「その子たちにキスしなさい」


その言葉は風に遮られることなく、運ばれていた。


あたしは大きく目を見開く。


ヒナが隣で「え?」と小さく呟くのが聞こえて来た。


次の瞬間、男2人が前へと歩み出た。


奏が戸惑った表情を自身の彼氏へ向けている。


「ねぇ、どうしたの?」


そんな奏での声なんて聞こえていないかのように、強引に唇を押し付けた。


奏は一瞬大きく目を見開いて、男を突き飛ばそうと両手を上げた。


しかしその手は奏の腰辺りで止まり、そのままダランと垂れ下がったのだ。