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その日の体育の授業は男女共に中止となってしまった。


意識を失った生徒がいるため救急車が呼ばれ、大山君は職員室に呼ばれたまま戻ってこない。


とても静かで、重苦しい空気が漂う教室内での自習となってしまった。


あたしは後ろから聞こえて来るペンを走らせる音に耳を寄せる。


大西さんは今何を考えているんだろう?


自分の彼氏が傷害罪で捕まってしまうかもしれないのに、教室まで戻って来る間も無表情を貫いていた。


苦しく、張りつめた空気をまとった自習時間から、チャイムと同時に解放されてあたしは大きく息を吐きだした。


普段ならすぐに大西さんに近づいてくる女子生徒たちだけれど、今はさすがに遠慮しているようで誰も近づいてこない。


あたしは胸ポケットから手鏡を取り出して後ろの様子を確認した。


大西さんは文庫本を取り出して静かに読み始めた。