女王様の言うとおり

大西さんと付き合えたことがよほど嬉しいのだろう。


「でも、本当に大西さんと大山君が付き合い始めたんだねぇ。なんか嘘みたい」


ヒナは大山君が出て行ったドアを見つめて呟いた。


「本当だよね。だけど、大西さんに彼氏ができてホッとした」


「うん。わかる」


あたしの本心にヒナは大きく頷いて同意してくれた。


この安堵感を覚えているのはきっとあたしたちだけじゃないだろう。


彼氏がいる子、好きな人がいる女子たちはみんな大西さんの存在を脅威に感じるはずだ。


「でもさぁ、本当に大山君のことが好きだったのかな?」


ヒナが声を小さくしてそう言った。


あたしは頷く。


「そうだよねぇ……」


一目ぼれということは確かにあるのかもしれないけれど、大山君は地味な生徒だ。


転校初日に告白されてオッケーを出す相手だとは思えなかった。


でも……。


あたしは後方でなされている会話に耳を傾ける。


あれだけの美人はきっと沢山の男子たちに告白をされてきたのだろう。


その中で大山君という目立たない存在の男子は珍しく、彼女にとっては良かったのかもしれない。