女王様の言うとおり

けれど、どんな質問にも大西さんは笑顔で返事をしている。


「素敵な人だと思ったから」


「少し会話をしただけで、惹かれたの」


「あたしにとって大山君は素敵な人だったから」


大西さんが返事をするたびに大山君の顔はニヤけていく。


今では頬から力が失なわれてしまって、完全に鼻の下が伸びきっていた。


これほどの美人にこんな風に言われたら、誰だってだらしない顔になってしまうだろう。


「ごめんなさい。ちょっと飲み物を買いに行きたいの」


まだまだ続きそうな質問責めを途中で止めて、大西さんが席を立とうとする。


「あ、それなら俺が買ってくるよ。なにがいい?」


鼻の下を伸ばした大山君がすぐにそう聞いた。


「いいの? 甘いものが好きなんだけど」


「炭酸? それとも、炭酸は入ってない方がいいかな?」


「じゃあ、炭酸が入ってないジュースを頼んでもいい?」


「もちろん!」


大山君は嬉しそうに頷くと、風のような勢いで教室を出て行ってしまった。


「なにあれ……」


それを見て唖然とした表情を浮かべたのはヒナだった。


「なんかすごいね」


あたしはそう言い、プッと噴き出した。