ドラマや映画以外で人のキスシーンを見たのは生まれて初めてだった。


あたしはしばらく呆然としてそのシーンを見つめていた。


目を閉じた大西さんのまつ毛は太陽の光でキラキラと輝き、綺麗だった。


男子生徒の方は目を見開き、硬直してしまって少しも動かない。


そのキスはほんの数秒だったはずだけれど、見ているあたしからしても何分間も経過したように感じられた。


大西さんがスッと身を引いて目を開けると同時に我に返る。


「行くよ柊真」


なぜだか、見てはいけないものを見てしまった気分になり、あたしはそそくさとその場を後にしたのだった……。