それらを見ている内にあたしは自分の心がワクワクしてくるのを感じた。


これは蟻の巣だ。


テレビや図鑑で見たことのある蟻の巣そのものだ。


「素敵……」


思わず、うっとりとした声でそう言った。


「でしょう?」


大西さんは嬉しそうに答える。


こんな素敵な家、どうして人間は作らないんだろう?


穴を掘り、沢山の部屋を作り、そこで共同生活をする。


ひとつひとつ区切られた家にいるよりも、大勢で肩を寄せ合って生活をする。


それこそ、素晴らしい毎日が送れそうだった。


「ここが寝室よ」


そう言って通された部屋は6畳ほどの広さのある穴だった。


床には沢山の枯れ葉が敷かれていて、寝転ぶと柔らかくて心地いい。


「明日には決着がつく。今日はゆっくり眠ってね」


大西さんの鈴の音の声はまるで子守歌のようで、あたしはすぐに眠りに落ちて行ったのだった。