クラスメートたちと同じように並び、大西さんにお菓子をあげるのだ。


大西さんが笑って「ありがとう」と言ってくれると、嬉しさがつま先から頭の先まで全部駆け巡って行く。


彼女の笑顔が見られるなら、なんでもやることができた。


それはある日の体育の授業中のことだった。


「可哀想に、死んでる」


大西さんが憂いを帯びた表情でそう言ったのであたしはすぐに駆け寄った。


「どうしたの?」


「見て、蟻よ」


大西さんが指さした先のグラウンドでは確かに数匹の蟻が死んでいた。


きっと前の授業で使ったクラスの子たちが踏みつぶしてしまったのだろう。


あたしの胸に強烈な痛みが走った。


蟻たちを踏み殺すなんて信じられない。


なんて野蛮な連中なんだ。


怒りと悲しみが胸中に広がり、言葉もでなくなってしまった。


それでも可哀想だから埋葬してあげようと思って足を踏み出した時「その蟻、食べてよ」と、大西さんが声をかけてきた。


あたしは足を止めて振り返る。