教室へ戻ると、転校生は男女問わずクラスメートたちに取り囲まれて質問責めにされていた。


ただの転校生ならきっとここまではならないだろう。


男子たちは一様に鼻の下を伸ばして、連絡先を手に入れようと躍起になっているのがわかった。


その中に柊真と遊星の姿がないことを確認して、あたしとヒナは目を見交わせて安堵のため息を吐きだした。


「へぇ! 前の学校では学年トップの成績だったんだね!」


女子生徒の興奮した声が聞こえてきて、あたしの耳はピクリと動いた。


「しかも1年生で陸上部のキャプテンだったの? すごいじゃん!」


そのざわめきにまたも不安が襲って来た。


見た目だけじゃなく、彼女は勉強やスポーツにも長けているらしい。


まさしく才色兼備なようだ。


時折聞こえて来る彼女自身の声に耳を向けてみると、「そんなことないよ」「この学校の生徒さんたちはみんな素敵ね」などと、自分を謙遜する言葉とみんなに憧れを抱く言葉が聞こえて来る。


これが彼女自身の本心だとしたら、相当なものだ。


だけど17年間生きてきてある程度ひねくれた人とも関わってきたあたしは、簡単に彼女の性格を信用したりはしなかった。