女王様の言うとおり

☆☆☆

「虫を大切にしましょう」


「虫は人間よりもと尊い命を持っています」


「虫を殺すのは人を殺すのと同じ罪になる」


永遠とそんなことを繰り返していた先生は、ついに学校に来なくなってしまった。


どのクラスで授業をしても全く同じ話ばかりを繰り返し、生徒や保護者から多くのクレームを受けたらしい。


それでも、先生は改善しようとはしなかった。


今一番生徒に伝えなくてはならないのは、虫の命のことだと言い張ったようだ。


もちろん、そんなことがまかり通るハズがない。


誰も先生の言葉に耳を貸さなくなった。


時々、真面目過ぎた先生は頭がおかしくなってしまったのだと、憐れみの目を向ける人もいた。


「いいか。先生がこの学校から去ったとしても、絶対に虫の尊さを忘れるなよ」


先生が最後のホームルームであたしたちに教えてくれたのはそんな言葉だった。


そして大きな拍手が沸き上がった時、不意に涙が溢れだして来た。


あぁ……もうダメなのだな。


この2年A組はもう、大半の生徒が寄生されてしまったんだな。


そう、実感したからだった。