「昨日、あたしたちがいない間に遊星は大西さんに呼びだされたの。『ヒナちゃんについて聞きたいことがある』って言われたんだって」


ヒナは目に涙を浮かべ、涼しい顔で友人と会話をしている大西さんを睨み付けた。


「でもそれは嘘だった。大西さんがあたしに興味を持つワケがないもんね。でも遊星は嘘に気が付かずについて行ったの。そしたら……」


そこでヒナは言葉を切り、下唇を噛みしめた。


「キス……」


あたしは小さな声で呟いた。


その声にヒナがビクリと肩を震わせる。


「キスしたよ? 女王様と」


遊星は楽し気な笑い声と共に言った。


「冗談だろお前。ヒナがいるのに、なんで!」


柊真が手を上げようとするので、あたしは咄嗟に止めに入った。


確かにヒナと遊星は両想いだったと思う。


だけど、付き合っていたわけじゃないのだ。


それに遊星を騙して連れ出し、キスをしたのは大西さんだ。


そのせいで遊星までおかしくなってしまった。