「虫を守ることは当然の行為です」


翌日のホームルームで先生が真っ先に言った言葉はそれだった。


急きょ全校集会が開かれ、昨日の奏の事故が報告された後のことだった。


「みなさんも身ならって、虫を守りましょう!」


熱く熱弁をふるう先生に賛同するのは男子2人と大西さんの3人だけ。


他の子たちは次々と起こる事件や事故に疲弊しきっている様子だ。


「このままじゃもっと被害が増えるかもしれない」


休憩時間になり、柊真がそう声をかけてきた。


「うん……」


大西さんが転校してきたからというもの、物騒な出来事が絶えず起こっている。


「でも、大山君の薬物検査の結果はまだ出ないよね。結果が出ない事には動けないよ……」


決定的な証拠を大西さんに突き付けてやらなければならない。


そうしないと周りの大人たちだって動けないだろうし。


「そんなの待ってる場合じゃなさそうなんだ」


「え?」


首を傾げて聞き返した時、柊真が窓辺へと視線を向けているのがわかった。


同じように顔を向けてみると、そこには遊星とヒナの姿があった。


普通に会話をしているように見えるけれど、なぜかヒナは泣き出しそうな顔をしている。