大事にしたい、壊したくない。
守りたい、優しくしたい。

そんな俺の気持ちとは裏腹に、郁田さんとふたりでいればいるほど、

その笑顔や匂いに触れるたび、どうしようもなく奪ってしまいそうになるから。

だから、今日だって。

先に帰っていいよって言ったのに。

郁田さんが、顔を赤く染めて『終わるまで一緒にいる』なんて言うから。

そんなこと言う郁田さんもすごく珍しくて、思わず、『わかった』なんて返答したけど。

後悔してる。
ものすごく。

普段の教室よりも狭い資料室。

好きな人とふたりきり。

ダメじゃん、こんなシチュエーション。

変な妄想をしないように、一生懸命、準備に集中しようとするけど。

視界の端にチラつく郁田さんの毛先とか、匂いが。

少しでも気を緩めたら、欲望のまま手を伸ばしそうになる。

ダメだ。

守るって、大切にするって決めたから。

今まで自分が彼女にしていた失礼な行動で、もう二度と傷つけたくないから。

本当はもっと触れたくて毎日しょうがないけれど。

……ほんっと、前の俺には考えられない。

相手の気持ち関係なしに平気で触れていたのに。

そんな俺がこんな風に思うようになるなんて。郁田さんってやっぱりすごいと思う。