「これから俺に何されても、郁田さんはなんの文句も言えない立場だよ」

「……っ、」

「本当の俺のことを受け入れるなら、俺の全部受け止めてよ」

そう言った彼の顔が近づいてきて。

今度こそ終わった、と思った。

夏目くんの言う通りなのかもしれない。

中途半端な優しさは、余計、人を傷つけてしまう。そう教えられた気がして。

「……ごめんなさ…っ、」

ギュッ

目を瞑って、自分の言動を謝ろうとしたけれど、

思わぬ暖かさに包まれてゆっくりと目を開けた。

「えっ……」

何、これ。

夏目くんにイタズラされるかと思って身構えていたけど、彼は私のことをフワッと優しく抱きしめていた。

「……ありがとう、郁田さん」

耳に届いたささやきがあんまり優しくて、ドキッと胸が鳴る。

夏目くんがわからない。
無理やり触れてくるかと思えば、そうじゃなかったり。

一体、何考えて────。

ガチャ

「ただいまーー!!」

っ?!