お前が好きだなんて俺はバカだな

「先輩...。
大丈夫かな...。」

「なるようになるしかありませんから。
私たちは報告を待つしかありません。」

えりなちゃんは前と比べてやけに落ち着いていた。

...前も落ち着いてはいたかも。

言うことが物騒だっただけで。

「えりなちゃんは...。
お兄さんのこと、どう思ってる?」

「悪い人ではないんです。
嘘はつきませんし、約束は守ります。
喧嘩が強いのだって、小さいころは、弱い人を助けてくれるためだったんです。」

「それが...どうして今のように?」

「お兄ちゃんに敵う人が減っていくと、誰も相手にしてくれないんです。
みんなただ、恐れて近づかないだけですから。」

「そうなんだ...。」

「そのうちに、お兄ちゃんは強い人を探しては喧嘩を売るようになりました。
それが楽しいって思うようになったんです。雑魚でも数をこなせば達成感にもつながるって。」

「...あの、前にいた仲間の人たちは?」

「あの人たちは仲間というより、ペットみたいです。
目をつけられたものの、何とか難を逃れ、安全の保障と引き換えに、お兄ちゃんに従っています。
それだけです。」

彼女の言葉は実に淡々としていた。

「じゃあ、あの大きな人も...?」

「黒潮さんは、お兄ちゃんの唯一の友だちです。小さい頃は、身体が大きいだけで、臆病者だったんですよ。」

「へえ...。」

「でもなぜか黒潮さんだけ、出会ったときからお兄ちゃんは臆病でもかわいいやつだって言って、ずっと側においています。
今日もたぶん、介入しないにせよどこかにいると思いますよ。」

なんか、そういう複雑な人間関係って私にはよく分からないけど...。

強い人っていうのもやっぱり孤独なのかな。

そういえば先輩に会ったときの顔。

本当に嬉しそうだったな。

例えるなら、大好物の食べ物を見つけたときみたいな...。

...ますます、心配。

「それはそうと、
美咲さんの方にも、様子を窺っている方がいらっしゃるようですが、彼女とはお知り合いですか?」

「え?」

えりなちゃんが手で示す方に目を凝らしてみると。

人ごみの中に、こちらを見る、会長の姿があった。

会長はこちらが気づかれたことを悟ると、目線を外す。

あー...。

やっぱりああいう辞め方したし、恨み買われちゃうよな...。

それに...。

「そういえば、あの方は生徒会の会長さんですよね。美咲さんも生徒会でしたっけ?
こういう場では一緒に行動しないんですか?」

「あ...えっと...。
生徒会、もう今は活動やってなくて。」

「なるほど。
あまり深く干渉するのはやめておきますね。」

勝手に納得されちゃったのが逆に気まずい。

「えっと...えりなちゃんは、
生徒会の話とか、何かきいてる?」

「どういう意味ですか?」

「えっと...噂、みたいな。」

「最近は休暇中ですし、関わりは薄いので特に何も。」

「最近は...そうだよね。」

「私が入学してからよく聞く噂はありますけど。」

「あ...。
会長と先輩の話?」

「はい。
お察しの通りです。」

「えっと...それって具体的にどういう...?」

「気になるのならお答えしますけど。
美咲さんのお立場ではあまり快い話じゃありませんよ?」

...分かってます。

「仲が良く、比較的親密にお話されてるのはご存知の通りですが...。
昨年の秋ごろから今年の春ごろにかけてはかなり具体的な事案もあったようで...。」

「え、なにそれ??」

「駅前を2人で歩いていた。
放課後に手紙を交換していた。
バレンタインに会長さんが手作りのお菓子を渡していた。
遠谷先輩が会長さんに花束を渡していた...
というような噂を耳にしました。」

「!?」

それはがっつりありすぎじゃありません...?

確かに、私が付き合う前までの話みたいだけど...。

あくまで噂だけど...。

「分かりやすく落胆していらっしゃいますね。」

「...。
ほんとなのかなぁ...。」

「当事者に確認するのが1番早いでしょうね。まあ、正直に答えるかどうかは別ですが。」

さっきから、えりなちゃんの言葉が辛辣すぎて、立っているのも辛くなってきた。

彼女に悪気はないんだろうけど。

もっと、オブラートに包んでいただけると...。

「...私って、やっぱり...。」

「...ご苦労様です。」

うぅ...。