「なるほど...。
こんな対策のしかたがあるんですね。」

「...これで分かったか?」

「どうなんでしょうね...。
宿題がスラスラ解けるようになったので、分かったってことなんですかね?」

「自信ないのか?」

「いえ...。
ただ、先輩の話をきいていると、何が分からなかったのか分からなくなっちゃうんです。」

「どういうことだよ。」

「先輩の教えてくれた通りに問題を解くじゃないですか。そうしたら、
あれ?本当にこんな問題でつまずいてたんだっけ?ってなるんですよ。」

「...それは、初めから分かってたってこと?」

「いいえ、それは違うんです。
確かに、自力で解こうとしたときは、全然分からなかった記憶はありますから。
先輩に教えてもらうと本当にそこが知りたかったんだよなってなるから、問題が凄く簡単になっちゃうっていうか...。」

「ん...?
まあ、分かってくれたのなら良かったけど。」

「不思議な感覚ですね。
先輩って普段、問題を全く別方向から見てる気がするんですよ。
それが分かっちゃうと、糸が解けていくみたいにできちゃうんで、なんだか、楽しくなってきました。」

「ああそう...。
それは、良かったけど...。」

「ふふ...先輩、勝ちましたね?」

「え...。」

「やっぱり先輩に教えてもらうのが1番ですよっ♪」

「...。」

無表情でクールな先輩の頬が、うっすらと染まっていく。

先輩...
かわいいな。

「...お前には負けたな。」

「え、なんでですか?」

「元からこんなの、お前次第でどうにもなることだから。

ひとつ言うこときいてやるよ。」

先輩、優しい...。

「先輩にしてもらいたいこと、沢山あるんで、ひとつに絞るの大変ですね。」

「1回しかないんだから、慎重に考えろよ。」

「うーん、明日まで待ってくれます?」

「いいぞ、決まるまで待ってやる。」

「ありがとうございます。
先輩、最近優しいですね。」

「いつもだろ。」

「そうですね。いつも、私のこと想ってくれます。」

「当たり前だろ。
お前は俺の彼女なんだから。」

「先輩...。」

結局、先輩との競争は、私が勝ちってことになった。

このままだと、先輩へのお願い事、使わないで最後まで取っとくことになりそう...。

最後ってなんだ...?

いや、そんなこと考えたくない。

だって、今が幸せなんだもん。