「先輩...あの。」

「なに?」

「話...きいてましたか?」

「いいや。
会長が何だかってきこえた気がするけど、声小さいしよく分かんなかったな。」

「そ、そうなんですか...。」

先輩は平然と帰り道を歩いてる。

「...気になったりしないんですか?」

「俺が気にするようなこと話してたのか?」

「いいえ...たぶん。」

「たぶん...?」

先輩は気になる感じはあるみたいだけど、それ以上は何も言ってこなかった。

「...実は、会長と先輩のこと...気になっちゃって、副会長に様子、きいてたんです。」

「なんで?」

「えっと...。
だって、やっぱり私より、会長との方が一緒にいた期間が長いじゃないですか...。」

「俺が?」

「...はい。」

「中学時代なんて散々こき使われた記憶しかないけど。」

「でも...楽しそうで...。
会長自体も、もしかしたら先輩のこと...。」

「俺のこと...?
って、いやいや、それはないだろ。」

「どうしてそう言い切れるんですか...?」

「お前、それは気にしすぎ...。
...。」

先輩は言いかけて、黙ってしまった。

心当たりがあるってこと...?

「先輩...?」

「なんか、似たようなこと前にもあったよな。」

「え?」

「ほら。お前がラプソディー野郎と話してたときだよ。」

「ああ...喧嘩したときですね。」

「そう。内容が少し似てたなって。
今はその逆だけど。」

「そ、そうですか...ね。」

「まあ、お前は俺と違って、他人のこと悪く言ったりはしてないけどな。」

「だって、会長のこと、悪く言いようがないんです。自分の方が劣ってるような気がして...。」

「気がするだけだな、それは。」

「そうでしょうか...。」

先輩は頷いた。

そうだよね...。

先輩がせっかく私のこと思ってくれてるのに、それを信じないなんて失礼だよね...。

「しっかしまあ...。
可愛いことしてくれたな。」

「すみませ...え?」

なんか、今ちょっと変なこと言って...?

「そんなに俺が側にいなきゃ落ち着かないのか。」

あ、...。

スイッチ入っちゃってる...。

先輩の長い指が、私の顎を持ち上げて...。

目...離せない...。

歯痒い感じが...たまらな...。

熱い視線が、私を捉えて離さない。

先輩の脚が、つんと私のお腹に当たる。

やだ...。

せんぱい...。

だ、だめ...。

「...。」

先輩は、ふっと優しく微笑むと、ゆっくり手を離した。

「先輩...?」

「あまりいじめると可哀想だからな。」

ぎゅっ。

「これで勘弁してやるよ。」

「...っ。」

もう...。

先輩のばか...。