私と先輩はしばらく生徒会室に残っていた。

「先輩、どうします?」

「会長は一度言いはじめたらこちらが折れるまできかないからな。」

「先輩、会長には弱いですよね。」

「悔しいけど否定はできないな。
あの人には人を従える力があんのかも。」

「先輩...会長と仲良いですよね...。」

「別に仲は悪くないけど。」

「昨日は私と白鳥さんのこと気にしてましたけど...。」

「ん?」

「先輩と会長...お似合いだって、よく噂されてるんですよ...?」

「...まさか。
絶対無理。」

「...。」

「なんでそんな元気なくしてんの?」

「私って...会長と違って美人でもないですし、勉強も楽器も何もできないですし...。」

「...お前さ、それは俺にまた喧嘩でも売ってるわけ?」

「そ、そんなつもりじゃないです...。」

「お前の言い方...俺の目は節穴だって言ってるようにきこえるんだけど。」

「ち、違います!
だって、だって...。」

「なんだよ。」

「先輩みたいにかっこいい人と...こうしてお付き合いしてるなんて...夢じゃないかって思うんです。」

「...。」

「だから...やっぱり、先輩が他の女の人に気を許しちゃってるのみると...不安です。
きっと先輩が私にそう思ってくれてる以上に。」

「...。」

「先輩...。」

「...俺のこと気にしたらキリがないとか言ってたくせに。
結局気にしてんじゃねえかよ、ばーか。」

先輩は、ふと笑みを溢してそう呟いたあと、私のおでこを指でつんと押した。

「...先輩、なんかご機嫌ですね。」

「ああ。
今日は機嫌がいい。」

「先輩の意地悪...。」

「意地悪でわるかったな。」

もう...。

「もっと...優しくしてください...。」

「良いよ。」

「え?」

「今日は、特別。
優しくしてあげる。」

...。

先輩、いつもと声のトーンが違う...?

「...先輩...?」

「結野は可愛いな。」

ま...

待って!

それは...それはだめです...。

先輩が笑顔...。

私の頭を撫で撫でしてくれる。

「え、え...先輩、どうしちゃったんですか...?」

「...そんなに心配しなくても、俺はお前のこと、大好きだよ。」

だ、大好き...。

聞き間違えじゃ、ないよね?

「...わ、私のこと...、
大切ですか?」

「うん、
大切。」

「私が...彼女で...、
良かったですか?」

「うん。
結野が彼女で本当に良かった。」

い、いつもの無理やり言わされてる感が、
ない...。

ゆっくり実況系棒読みボイスじゃない...。

ツンデレのツンがどっかいっちゃった...。

やだ...そんなに見ちゃ...。

「せ、んぱい...。」

また、喉がごくんっていっちゃう...。

「せんぱい...わたし...わたしも、
先輩のこと...だいすきです。」

ぎゅっ。

「嬉しい。
ありがとう。」

こ、これ1日限定なの..?

ずっとつづいて...?

おねがい...。

...。


でも、やっぱり、

「先輩。
何を企んでるんですか?」

「、」

「もしかして、1日優しくして私の機嫌とって...ボーカルやらせようとか考えてないですよね?」

「...ち、
バレたか。」

いつもの先輩のほうが、先輩らしいからそれでいい。

先輩はゆっくり手を離した。

...ちょっと残念。

「もー。
こういうのは平等に決めましょう?」

「...じゃんけんとか?」

「それは不平等です。
私に運ゲーは無限ルール採用じゃなきゃフェアじゃないって、先輩も知ってるでしょ?」

「...ダメだな。そもそもそのルール採用が強制されること時点がフェアじゃないから。」

「うーん...。
ゲームでは先輩に勝ち目ないですから...。」

「そうだな。
何をしてもお前が不利だ。」

「ひとつあります。勝てる方法。」

「なんだよ。」

「女の子じゃなきゃ勝てないゲームです。」

「おい。」

「参加者が女の子なら勝ち。
そうじゃないなら負けです。」

「...つまり、俺がやることは強制だと?」

「そうです。
それに、今日は先輩が私に優しくする縛りがありますから。二重の規定はいくら先輩でも破れません。」

「...お前こういうところだけ頭が働くんだな。」

「...決定ですねっ!」

先輩は呆れたようにため息をついた。

でも、そんなに嫌じゃなさそうだ。

「先輩の歌きけるなんて...楽しみです。」

「...お前も尽力しろ。」

「タンバリンならできますよ?」

「タンバリンはドラムとぶつかるからいらない。」

「むぅ...。」

「そうだな...キーボードでもやれ。」

「えー。」