「どっちもどっちだね。美礼さんも美礼さんだし、姉ちゃんも姉ちゃんだ。」

「...ヒガシに何が分かるわけ?」

「自分でも言いすぎたなって思ってない?
美礼さんはめちゃくちゃ思ってると思うよ。」

「あの人は思ってないよ。
私のこと道具かなんかだとでも思ってるんじゃない?」

「こんな姉ちゃんでも道具にしてもらえるなんて、幸運なことだよ。」

「...私が悪いの?」

「冗談。
姉ちゃんが本心からそんな風に思っちゃったらおそらくもうだめになっちゃうから。」

「...何が言いたいのよ。」

「おそらく、このまま過ごしていけばいいんじゃない?自分が謝りたくないなら、そのまま美礼さんのこと無視してればいい。」

「無視...。」

「姉ちゃんには僕もイツキもついてるし。
嫌なら本当に白鳥さんみたいな優しい人と付き合っちゃえば?
そうすればこんなことで嫌な思いすることもないだろうから。」

「え...。」

「僕ははっきり言って、美礼さんのこと、どうでもいいと思ってるよ。」

「それは...言い過ぎじゃないかな。」

「そう?
だって、家族でもあり、母親でもある姉ちゃんが幸せなら、それでいいんだから。
あ、あくまで家族としてね。」

「...。」

「姉ちゃんには味方がいるけど、美礼さんはどうなんだろうね。」

「そりゃあ、いるでしょ。
女の子でもなんでも。」

「僕はいないと思うな。
だって、美礼さん性格悪いし。」

「...。」

「姉ちゃん。
美礼さんが姉ちゃんに意地悪な理由分かる?」

「ストレス発散。」

「ストレス発散にはやけ食いが1番って言ってたよ。」

何その危ない行為...。

「美礼さんがそうする理由は姉ちゃんのことが好きだからだよ。」

「ふーん。
もしそうならなんであんなに性格悪いわけ?普通好かれたいって思うでしょ。」

「うん。
だからだよ。」

「意味が分からない。」

「普段、猫被ってるのは、本当の自分とは言えないでしょ。
姉ちゃんに見せてるあの嫌な部分が本当の美礼さんなんだよ。」

「なにそれ...。」

「美礼さんは、そのこと、姉ちゃんに受け入れて欲しいんじゃないかな。」

「そんなの無理。
性格悪い人受け入れろだなんて。
親しき仲にも礼儀ありってね。」

「姉ちゃんにしてはまともなこと言うね。
それに、わがままは嫌い!みたいなこと姉ちゃんがちゃんと意思表示したのも正解だと思うよ。」

「...。」

「無理なことは無理だからね。
嫌いな人を好きになるなんてなおさら。」

「そういうわけじゃないけど...。」

「姉ちゃんはつくづくお人好しだね。
まだ一応好きなんだ、美礼さんのこと。」

「まあ...。
ただ、私はちょっと気にしすぎじゃないかって言ったのが分かってもらえなかっただけだから...。」

「これだけは言えるけど、美礼さんに本当の意味で付いていけてるのって、姉ちゃんしかいないと思うよ。」

「本当の意味?」

「姉ちゃんもさっき似たようなこと言ったけど、やろうと思えば美礼さん、いくらでも優しくなれるだろうからね。
表面的な彼女作るのなんて朝飯前だよ。」

「...。」

「なんとなく、言いたいこと分かったでしょ。」

「やっぱり、謝らなきゃだめ?」

「ま、僕の見立てだと案外すぐ向こうから謝ってくると思うけどね。」

「そうかな...。」

ヒガシに話しちゃうと、なんか小さいことみたいに思えてくるな...。

「今日はいい記念日だね。」

「は?」

「姉ちゃんと美礼さんが初めてちゃんと喧嘩した記念日。」

ら、
楽観的すぎる...。