「美礼さん。朝ご飯できましたよ。」

「なんでここ数日俺の家にいるの...?」

「あわよくばここに住もうかなと思って。」

「そう...。」

「...大丈夫ですか?顔色悪いみたいですけど。」

「大したことないけど、調子は良くないかも。」

「朝ご飯食べられますか?」

「少しなら。残したらごめん。」

「気にしないでください。」

まだ周期的に調子が悪くなってしまうらしくて...。

そんなとき、私にできることは...。

「美礼さんまず、私で充電しましょ?
ほら、ぎゅー。」

「...。」

「どうですか?」

「...あったかい、もうちょっと。」

「いいですけど、あとちょっとでお仕事いく時間になっちゃいますよ...?」

「あと10秒...。」

そう言ってちゃんと離してくれた試しがない...。

「お仕事ちゃんと行けます...?」

「行ける。もう大丈夫。」

彼はそう言ってベッドから立ち上がった。

なんだ、今日はあっけないな。

「...。」

「何?
今から着替えるから、部屋出ててくれないかな。」

「...はい。」

そっと部屋を出る。

やっぱり...みられたくないんだな...。

そうだよね...。

でも、

すぐにかちゃっと音がして、

後ろから抱きしめられる。

「あ、の...。」

いつもより熱を感じる...。

「やっぱり、そこにいるなら着替えるの手伝って。」

「でも...いいんですか...?」

「ずっと一緒にいてくれるんだろ。」

くるりと後ろ側に向かされてしまった。

ズボンもはいてるし、シャツは羽織ってるけど、ボタンをしめてない。

その隙間...下腹部辺りには手術をした跡があるのが見える。

何も言えず、黙々と着替えるのを手伝った。

「ありがと。」

私の頭を一回ぽんとして、食卓につく。

「いただきます。」

「はい...。」

私、気にしてるような素振りしちゃったかな。

申し訳ないな...。

本当はきっと、隠しておきたいことを無理矢理掘り起こしちゃうのって、良くないんだろう。

...しばらく何も言えなくて沈黙していると。

「...なんか暗いね。」

「いえ。そんなことないですよ?」

「やっぱりいきなり傷跡見せるのは嫌だった?」

「違います。逆に美礼さん自身は大丈夫なのかなって...。」

「大丈夫。
何日か居付かれてもう安心した。」

「安心...ほんとですか?」

「そう、特に今日は。身体は不調だけど心は快調かも。」

「よかったです。でも、具合悪そうですから、今日は無理しちゃだめですよ。」

「うん、分かってる。
そういえば近々総務課くるってほんと?」

「なんか、そうしたほうがいいって部長や同僚に決められちゃいました。」

「そうか...どんまい。」

「でも、その方が美礼さんのサポートとかできますかね。」

「ん...まあ、こうして側にいてくれるだけでも十分だけど。」

彼はそう言って、食べ終わった食器を片付け始めた。

「私が片付けておきますよ。先に支度済ませてください。」

「わるいな。」

「いえ。」

どんなときも、きっちりしてるな...。

ああやって隙を見せたりするのもほんの一瞬のような気がする。

この人が早く私に追いつきたいなんて、

やっぱり筋違いじゃないだろうか...。