お前が好きだなんて俺はバカだな

「これでひと通り完了ですね。」

カメラや録音機材など、先輩の物からデータを転送した。

要らないデータは、もうない。

「先輩、帰りましょうか。」

「ああ...。」

...。

「ここ、内側から鍵かけられるんですね。」

「...?」

「そうしたら、先輩と私の2人きり...。
密室ですね...。
なんて。」

「...サスペンス空間にすんなよ。」

「分かってますよ。

でも...
なんだかドキドキします。」

「...。」

「先輩、もう少しここで...。」

「え、いや...
ここで変なことしてもしょうがないだろ。」

「変なことって、何ですか?」

「それは...。

ともかく、もう遅いし、終業時間になるんだから、ここから出ないとまずいだろ。」

「どうして...?」

「どうしてって...。
やっぱり、お前...。」

「...少しだけにしますから。」

「少しだけ...?
何を...おい...、」

「逃げないで...くださいよ...。」

「待て...、ここ...向こうから、みえるから...」

「...」

「待って...ごめん、ほんとに...

ゆいの、」

慌てる先輩の口を塞いだ。

その瞬間に、彼の身体がびくんと跳ねて、硬直する。

「ん...っ...。」

先輩の喉がごくっと鳴る音がして...。

触れているところ...あつい。

ふわっと、ラベンダーの匂いがした。

その甘い匂いで、きゅうっと身体が縮んでしまうような気がして。

...。

「は...っ、」

唇が離れた。

「ゆいの...ごめん、なさい...。」

それでも、彼の口から出たのは、

そんな謝罪の言葉...。

私を見て、瞳の奥を揺らしながら...。

まるで、うわごとのように...。

「先輩のせいじゃないです。」

「...。」

「先輩、どうしたんですか。
彼女からのキスがそんなに嫌ですか?」

「違う...。」

「じゃあ、よかったってことですよね。」

「...。」

「ほら、もうすぐ終業時間ですよ。ぼーっとしてないで、帰りましょ?」

「...ああ...。」