お前が好きだなんて俺はバカだな

「どうした?
もう、夜遅いぞ。」

先輩に電話してみた。

「先輩、寝てましたか?」

「これから寝るとこ。」

「あの...。」

「ん?」

「どうして、私のこと...
好きなんですか?」

ああ、私なに言ってるんだろう。

急にこんな...。

「それは、登山家にどうして山を登るのか訊くのと同じ原理だな。」

「え...?」

「俺がお前のこと好きなのは、そこにお前がいるからだ。
これ以上の理由は他においてない。」

あ...。

先輩の、全く嘘偽りのない、はっきりした声。

落ち着くなぁ...。

「じゃあ、私がそこにいなかったら...。
出逢ってなかったら、先輩は違う人を選んでましたか?」

「愚問だな。
登山家は元から世界に山がなかったらなんてことをいちいち考えるのか?」

「それは...。」

「俺とお前が出逢うことは必然だ。
絶対に。」

身体が温かくなってくる...。

「先輩...好きです。」

「俺も好きだ。」

「愛してます。」

「俺も愛してる。」

ただ電話で話してるだけなのに。

愛してるだなんて、大げさなのに。

安心、する...。

「先輩、ありがとうございます。」

「いいよ。
今日は機嫌がいいからな。」

「もぅ、機嫌が良いからってこんな...。」

こんな、私のことを先輩は気遣ってくれて...。

「先輩のばかっ。」

私は嬉しい気持ちをいたずらに隠して、そう言った。

「何がばかだよ。
お前のほうこそばかだろ。」

「ばか、ばか...。」

「...ばーか。」

その日はずーっと先輩とばかって言い合っていた。

私の気持ちが完全に安心しきるまで、ずっと...。

私のこと、ちゃんとばかって言ってくれる人がいて、わたしって...

とっても、幸せなんだな...。