お前が好きだなんて俺はバカだな

2人で花火を見る。

綺麗な光が、一瞬で消えちゃうのが惜しい気がする。

だからいいっていうのもあるんだろうけど。

さっきの話、気になるけど...。

「先輩...喧嘩、勝ったんですか?」

「分からないけど。相手は満足したみたいだから。でもさすがに、強かったな。」

「怪我、したんですか?」

「うーん...。
ここ、ちょっと当たったから痛い。」

あまり目立たないけど、よくみると、耳の辺りに、切り傷ができている。

「ばんそうこう、貼って。」

「え...あ、はい。」

私は、持っていた巾着からガーゼと消毒液と絆創膏を取り出した。

「まずは消毒してからです。」

「...っ...。しみる。」

「すぐ終わりますから、我慢してください。

...ほら、もう終わりましたよ。」

「...結野。」

「はい?」

「...。」

先輩は、黙って私をまじまじと見る。

「なんですか、先輩?」

「...やばっ...。」

「何がですか?」

先輩は私の瞳の奥を探るように、真剣な顔で私を見つめた。

そして...。

「先輩...?」

「...。」

「え...あ、の...、
...っ...。」

肩に手が触れる。

胸の奥が...飛び出るほど強く弾む...。

引き寄せられるように、先輩の顔が近づいて...。

その熱くて密やかな息が、かすめ、て...。

「ゃ...。」

ぎゅっと目をつぶった、

そのとき。

「ひゃっ!」

急に勢いよく先輩の腕に引き込まれた。

ぎゅっ

と先輩が、強く私を抱きしめる。

「せ、せんぱい...痛いですっ...。」

「...だって...浴衣とか...。
マジでたまらん。」

「...え...?」

「かわいすぎる...。」

「!?」

や、やだ...っ。

この人何言ってるの...?

「せんぱい...離してください...。」

「もう少しだけ...。」

「え、ちょっともう...。
今日、先輩変ですよ...?」

「だって、もう2人きりだし、
がまんしなくていいし。」

「がまんって...。」

「たまにはこうやって、
甘えても...いいだろ。」

そんな...。

「や...です。
もう離してください。」

「ゆいのっ...。」

や...っ。

そんな耳元で、囁かれたら...。

「ず、頭突きしますよっ!」

「...。」

先輩は、ようやく力を緩めて、私にもたれていた身体を起こした。

「...っ!」

やだ、先輩...。

頬を染めて...そんなに必死な顔で私を...。

目が合った瞬間、お腹のあたりから胸に熱いものが溢れ出てくる。

...もう嫌...。

たまらず目を逸らした。

だって、これ以上見たら、また泣いてしまいそうだったから。

それからゆっくり手が解かれていくのを感じた。

「結野。」

「は、い...?」

「腹減った。」

「...っ。」

先輩はいつもと同じ冷静な顔に戻っていた。

気のせいだったのかな...。

「やっぱり、花火より団子だわ。
なんか屋台で買ってくる。」

「...私もいきます。」

「うん。」

...今は何にも考えられないな。

とりあえず、私もお腹空いたから落ち着いて何か食べよう。