息が上がり気味で洗面所から出て、ハンドバッグを取りにリビングに行くと、直斗さんが「だいじょうぶ、送っていこうか?」と声をかけてくれた。
「玄関の靴見たけど、あれで歩くの大変じゃない?」

ものすごくありがたい申し出だけど、ゆっくり歩いても間に合うように時間を逆算して身支度を頑張ったから。直斗さんを運転手がわりに使うのは気がひける。
「いちおう余裕をもって身支度したので、だいじょうぶです」

「帰る時間だけ、分かったら連絡もらえるかな」

「分かりました」

「じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」と直斗さんに見送られて家を出る。って、このシチュエーションは初めてかも。ちょっと新鮮だな。

ああやっぱり、ピンヒールだと歩きにくい。ふだん会社用にはローヒールか中ヒールしか履かないから。焦らずゆっくり行こう。転んだりしたら元も子もない。

地下鉄を乗り継いで、目的の駅へ。ここで待ち合わせていた春海と落ち合って、式場へむかった。