結婚式には、柚月のお店によく来るようになった蓮司と片瀬さんがいつの間にか柚月と意気投合して飲み仲間になっていて、片瀬夫妻と香田夫妻にも参列してもらった。

みんなの笑顔と拍手に包まれながら、バージンロードを父と歩く。

その先には、タキシード姿の柚月が微笑み、私に手を差しのべる。
そっと手を重ねて

「…お待たせ柚月」
と柚月に微笑み返すと

「ったく、長い間待たせ過ぎだ。
……やっと、朝陽と結婚できた。
もう絶対離さないからな」

満面の笑みを浮かべた柚月に私も自分の気持ちを素直に口にする。

「うん‥離さないで。私も柚月を離さないよ」

柚月と笑顔で見つめ合った瞬間、室内のチャペル挙式なのに、頬にひやりとした風を感じ、ふわりとベールが風に揺れた。

懐かしい香が風とともに鼻をくすぐる。

『しんた、朝陽を頼むからな。絶対に泣かすんじゃねーぞ!朝陽、幸せになれよ。
しんた、朝陽、結婚おめでとう』

風とともに兄の声が聞こえた気がして、びっくりして柚月を見つめると、同じように柚月も大きく目を見開き固まっていた。

柚月は、ふっと笑い、風に揺れたベールに手を添えて、私の顔を露にすると

「安心しろ。
一生とことんお前の分もあまやかすよ」

そう囁くと、目を細めた顔が近づき、そっと目を伏せると温かな唇が重なり、私達はお兄ちゃんと神様に変わらぬ愛を誓った。