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「なんですぐ結婚が無理なんだよ!2年後ってなんなんだよっ!」

不貞腐れた柚月はベッドの中で背後から納得いかないと力を込めて抱き締めた。

「痛いってば!柚月、痛い!」

「なぁ、なんで今すぐじゃないんだよっ!もう充分待ったんだからこれ以上じらすなよぉ」

「だって…。
恋人同士の時間ほしいんだもん…。
それに…式までに髪をもう少し伸ばしたいし、お料理も少しはできるようにしたい…」

恥ずかしくて全身がカーっと熱くなる。

「はぁぁ、こんなに待ったのに、まだ俺をまたせるのかよ。
いい度胸してるな朝陽」

「…ごめん」

布団を引っ張りあげ顔を隠すと

「ふっ、でもまぁいっか。
そんな可愛い理由ならダメなんて言えないだろ。
ズルいな朝陽は。
ほんと、可愛すぎてどこまで俺を煽るんだよ。

なぁ、朝陽、今度大地のところに俺たちのこと報告に行こうな」

「うん…」

柚月の方に身体の向きをかえて柚月の背中に手を回す。

私だけの大切な人。

うん、お兄ちゃん、私は今幸せだよ。

私たちがこうなることをお兄ちゃんはもしかして予想していたんだろうか…。

はじめて家に訪れたしんちゃんと兄の会話が思い出される。

「朝陽ちゃん、俺のこともお兄ちゃんって呼んでよ」

「呼ばない…。
お兄ちゃんは一人だけだもん!
しんちゃんは、しんちゃんなの!」

「しんた、お前の兄ちゃんは俺だ!
俺のこと兄ちゃんって呼べよな」

「はぁ?
俺のほうが先に生まれてんだよ!
なんでお前が俺の兄ちゃんなんだ?」

「…さぁな。
まぁ、いつかしんたに俺のこと兄ちゃんって呼ばせてやるよ」