「俺が帰国した時にはもう葬儀は終わってて。
朝陽は……無表情で、誰の声にも、俺の声さえも反応してくれなくて。

ほとんど寝ないしご飯も食べないって親父さんもお袋さんも心配してた」

そう…。

目の前で事故にあった兄とともに救急車に乗り、少しずつ心音が弱まっていくのを黙って見ていることしか出来なかった。

目を閉じれば血まみれの兄の姿しか思い出せなくて、怖くて眠れなくなって食事も喉をとおらなくなった。

あぁ、そうだ、誰かが私を抱き締めたんだ。

「我慢しないでおもいっきり泣けばいい。
朝陽の涙は全部俺が受け止めてやるからいっぱい泣いて明日は笑顔になれ…」

あぁ、そうだ。
デジャヴじゃない。

蓮司の結婚式の夜に抱き締められて言われた言葉は、兄をなくしてどうにもならなくてもがいていた私を救ってくれたのだ。

あのとき口にした温かなスープは私を現実に引き戻してくれたのだ。