「ねぇ、柚月…。
柚月のお店って二人が名前を聞いて笑うようなお店なの?」

「ん…」

腰に回されていた腕がゆっくり離され、再び指を絡めて繋がれた。

「朝陽はほんとに俺のこと知ろうとしないし関心ないんだな」

寂しそうに笑った柚月は

「Chaoyang 、日本語に訳すと "朝陽" 」

繋がれた手に力が込められて、ひとこと発した柚月はそのまま口を閉ざして歩きだした。

私の頭の中は混乱していた。

お店の名前が私の名前って、偶然なのかあえてそうつけたのかがわからない。

あえてにしたって、お店は私が知る限り5年くらい前、私が柚月と知り合う前にできたはずだ。

そう、さっきも柚月は蓮司に『あなたなんかよりずっと朝陽との付き合いは長いんだ』って言っていた。

やっぱり私たちは蓮司の結婚式の晩より以前にあったことかある…?

私たちはお互いに何も言葉を発することなくそのまま水族館をあとにした。