ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「…………そう、だな」
　
ミカエルの言う通り、残りの一週間で俺があいつらに残せてやれる物なんて少ない。

ましてや、この一週間で第二ステップをクリアさせてやる事なんて出来ない。

特に共振の力を少しずつ引き出せるようになったソフィアはな。
　
サファイアが眠らせたという【魔人の彼女】が上手く覚醒できれば、可能性はなくはないが今のソフィアにそんな無茶はさせられない。
　
これはソフィアと彼女の問題で、ソフィア自身が乗り越えるべき試練なんだ。

「あの子たちがこの一週間で君よりも強くなれるとは正直思ってもいませんが、どうですか？　あの子たちに君が経験したことを同じく経験させてみては」

「……俺が経験したことだと？」
　
俺が経験したことって……なんだよ？

「まさか忘れたんですか？　君は彼女を失ったことによって、新の強さを手に入れたと言うのに」

「っ！」
　
まさか……俺が経験したことって！

「君は彼女を失った事によって、新の強さを手に入れる事が出来た。だとするなら、彼女たちにも同じ経験をさせてやれば、直ぐに強くなる事が出来ると思いますけど？」

「……てめぇ……いい加減にしろよ！」
　
俺は怒りで体を震わせながら、ミカエルをギロリと睨みつけた。

「俺と犯した同じ過ちをあいつらにも強いろって言うのかよ？　ふざけんじぇねぇよ！　あいつらにあんな苦しみは必要ねぇんだよ！」
　
ソフィアたちには自分たちを支えてくれる仲間と呼べる存在がいる。

その存在があるだけで、あいつらはこの先十分強くなっていける。
　
俺と同じ過ちを犯す必要なんて――

「本当にそうでしょうか？」

「――っ」
　
ミカエルは半開きにしていた目を見開くと言う。

「人は大切な物を初めて失ってこそ、新の強さに気づく事が出来る。それはあなたも身を持って経験して分かったはずだ」

「……そ、れは」

「それだと言うのに、あなたは自分が経験して手に入れた強さを否定すると言うんですか？　それを否定してしまったら、あなたは自分の強さを否定したことになりますよ？」
　
その言葉に俺の心臓が大きく跳ね上がった。