ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

でも今目の前に居るミカエルは、俺に虹の花のツボミを渡そうとして来ている。

しかし虹の花は魔法協会主催のオークションに出品される予定だと、セイレーンはそう言っていた。

それだと言うのにどういう風の吹き回しなんだ?

「どうしたんですか? 要らないんですか?」

「……っ」
 
本当ならこいつの目的を確かめもせず、簡単に受け取りたくないと思うところだけど、俺には時間がもうない。
 
このチャンスを逃してしまったら、今度また三百年待たなければならなくなる。

それに次の三百年後に、今のアレスたちみたいな守護者たちが存在しているかも分からない。
 
俺だって……居ないんだ。

だから――

「……」
 
俺は何も言わず差し出された小さなプランターをそっと受け取った。

「俺の気が変わらない内に、とっとと消えろ」

「君にそう言われなくても、そうするつもりだよ。これで私の目的は果たされたからね」

「目的だと?」
 
その言葉に目を細めてミカエルを睨みつけるが、奴はきっとこれ以上は語らないだろう。
 
ミカエルは俺に背を向けると、ウリエルと共に同口の出口の方へと歩いて行く。

「君のためにわざわざ虹の花を用意してあげたんだ。決して無駄にしないようにね」

「そんなこと、てめぇに言われなくても分かっているさ」

「期待しているよ。あ、そうだ。虹の花のツボミは月の光を浴びて成長するから、月の光が差し込むところにでも置いておくと良い」
 
月の光を浴びて成長する? 

って事は虹の花が蕾を付かせる場所はきっと、この世界で一番月の光が当たる場所だ。

でもそんな場所……あったか?