ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「これは君からしたら、悪い話ではないと思うんだけど?」

「は? お前がこれからする話が、俺にとってメリットがあるって言うのかよ? まさか魔剣ライトニングをタダでくれるって言うのか?」
 
俺の言葉にミカエルは頭を左右に振った。まあ、そうだよな。そう簡単にはくれないよな。

「ラグは私たちの大切な家族なんだ。だから何があっても手放す気はないんだよ」

「……そうかよ」
 
だったら取引の話っていったい何なんだ?

「これは今の君からしたら、ラグよりも最も価値のある物だと思うよ」
 
ミカエルはそう言うと、目の前に手をかざした。そして白い布で覆い隠された、ちょっとおしゃれな小さなプランターを俺へと差し出した。
 
その光景に俺は目を見張るどころか、目の前に差し出された物を思わず凝視してしまった。

「ウル」

「はい」
 
ウリエルはプランターを覆っている白い布を優しくそっと取り外した。

すると白い布の中から姿を現したのは、七色に輝くまだ開花前の虹の花の蕾だった。

「なっ!」
 
まだ開花していない……虹の花のツボミ! 

「君も知っていると思うけど、虹の花は三百年に一度咲くと言われる幻の花だ。しかし虹の花はごく限られた場所でしかツボミを付かせない。だから見つからない事の方が多いものだ。君だってこれをずっと探していたのだろう?」

「……知っているくせに、そんなこと聞いてくんじゃねぇよ」
 
確かに俺はずっとこの三百年間、虹の花を探し回っていた。

それはこの花が何よりも重要かつ絶対に必要な物だったからだ。
 
ミカエルの言った通り、虹の花がツボミを付けるのはごく限られた場所だけ。

まず普通の環境下では絶対にツボミを付ける事はない。

だから俺はずっとその場所を探していた。

しかし……俺は見つけ出す事が出来なかった。

この長い時間を使っても見つける事が出来ず、だから俺は森人族のベルに協力してもらうことで、虹の花の行方を追っていた。

そしてつい最近になって、セイレーンからミカエルが虹の花を持っている事を知った俺は、何とかして奪ってやろうと考えていた。